Книга · こころ
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Автор: 夏目漱石
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「十一月の寒い雨の降る日の事でした。私は外套を濡らして例の通り蒟蒻閻魔を抜けて細い坂路を上って宅へ帰りました。Kの室は空虚でしたけ
れども、火鉢には継ぎたての火が暖かそうに燃えていました。私も冷たい手を早く赤い炭の上に翳そうと思って、急いで自分の室の仕切りを開け
ました。すると私の火鉢には冷たい灰が白く残っているだけで、火種さえ尽きているのです。私は急に不愉快になりました。
その時私の足音を聞いて出て来たのは、奥さんでした。奥さんは黙って室の真中に立っている私を見て、気の毒そうに外套を脱がせてくれたり、
日本服を着せてくれたりしました。それから私が寒いというのを聞いて、すぐ次の間からKの火鉢を持って来てくれました。私がKはもう帰った
のかと聞きましたら、奥さんは帰ってまた出たと答えました。その日もKは私より後れて帰る時間割だったのですから、私はどうした訳かと思い
ました。奥さんは大方用事でもできたのだろうといっていました。
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