Talen

Toetsenbord

Pagina 104 van 185

Auteur: 夏目漱石

Tijd0:00
Snelheid (WPM)0.0
Nauwkeurigheid100.0%

Druk op start en typ de regels precies na. · Backspace uitgeschakeld — ga door, ook na een fout.

私は未亡人の事を常に奥さんといっていましたから、これから未亡人と呼ばずに奥さんといいます。奥さんは私を静かな人、大人しい男と評しま
した。それから勉強家だとも褒めてくれました。けれども私の不安な眼つきや、きょときょとした様子については、何事も口へ出しませんでした
。気が付かなかったのか、遠慮していたのか、どっちだかよく解りませんが、何しろそこにはまるで注意を払っていないらしく見えました。それ
のみならず、ある場合に私を鷹揚な方だといって、さも尊敬したらしい口の利き方をした事があります。その時正直な私は少し顔を赤らめて、向
うの言葉を否定しました。すると奥さんは「あなたは自分で気が付かないから、そうおっしゃるんです」と真面目に説明してくれました。奥さん
は始め私のような書生を宅へ置くつもりではなかったらしいのです。どこかの役所へ勤める人か何かに坐敷を貸す料簡で、近所のものに周旋を頼
んでいたらしいのです。俸給が豊かでなくって、やむをえず素人屋に下宿するくらいの人だからという考えが、それで前かたから奥さんの頭のど
こかにはいっていたのでしょう。奥さんは自分の胸に描いたその想像のお客と私とを比較して、こっちの方を鷹揚だといって褒めるのです。なる
ほどそんな切り詰めた生活をする人に比べたら、私は金銭にかけて、鷹揚だったかも知れません。しかしそれは気性の問題ではありませんから、
私の内生活に取ってほとんど関係のないのと一般でした。奥さんはまた女だけにそれを私の全体に推し広げて、同じ言葉を応用しようと力めるの
です。
「奥さんのこの態度が自然私の気分に影響して来ました。しばらくするうちに、私の眼はもとほどきょろ付かなくなりました。自分の心が自分の
坐っている所に、ちゃんと落ち付いているような気にもなれました。要するに奥さん始め家のものが、僻んだ私の眼や疑い深い私の様子に、てん
から取り合わなかったのが、私に大きな幸福を与えたのでしょう。私の神経は相手から照り返して来る反射のないために段々静まりました。

Druk op start en typ de regels precies na.

Niet gestart