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पृष्ठ 123 / 185

लेखक: 夏目漱石

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「私の座敷には控えの間というような四畳が付属していました。玄関を上がって私のいる所へ通ろうとするには、ぜひこの四畳を横切らなければ
ならないのだから、実用の点から見ると、至極不便な室でした。私はここへKを入れたのです。もっとも最初は同じ八畳に二つ机を並べて、次の
間を共有にして置く考えだったのですが、Kは狭苦しくっても一人でいる方が好いといって、自分でそっちのほうを択んだのです。
前にも話した通り、奥さんは私のこの所置に対して始めは不賛成だったのです。下宿屋ならば、一人より二人が便利だし、二人より三人が得にな
るけれども、商売でないのだから、なるべくなら止した方が好いというのです。私が決して世話の焼ける人でないから構うまいというと、世話は
焼けないでも、気心の知れない人は厭だと答えるのです。それでは今厄介になっている私だって同じ事ではないかと詰ると、私の気心は初めから
よく分っていると弁解して已まないのです。私は苦笑しました。すると奥さんはまた理屈の方向を更えます。そんな人を連れて来るのは、私のた
めに悪いから止せといい直します。なぜ私のために悪いかと聞くと、今度は向うで苦笑するのです。
実をいうと私だって強いてKといっしょにいる必要はなかったのです。けれども月々の費用を金の形で彼の前に並べて見せると、彼はきっとそれ
を受け取る時に躊躇するだろうと思ったのです。彼はそれほど独立心の強い男でした。だから私は彼を私の宅へ置いて、二人前の食料を彼の知ら
ない間にそっと奥さんの手に渡そうとしたのです。しかし私はKの経済問題について、一言も奥さんに打ち明ける気はありませんでした。
私はただKの健康について云々しました。一人で置くとますます人間が偏屈になるばかりだからといいました。それに付け足して、Kが養家と折
合の悪かった事や、実家と離れてしまった事や、色々話して聞かせました。私は溺れかかった人を抱いて、自分の熱を向うに移してやる覚悟で、
Kを引き取るのだと告げました。そのつもりであたたかい面倒を見てやってくれと、奥さんにもお嬢さんにも頼みました。私はここまで来て漸々
奥さんを説き伏せたのです。しかし私から何にも聞かないKは、この顛末をまるで知らずにいました。私もかえってそれを満足に思って、のっそ
り引き移って来たKを、知らん顔で迎えました。

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