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المؤلف: 夏目漱石

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私は母に対して反感を抱くと共に、子に対して恋愛の度を増して行ったのですから、三人の関係は、下宿した始めよりは段々複雑になって来まし
た。もっともその変化はほとんど内面的で外へは現れて来なかったのです。そのうち私はあるひょっとした機会から、今まで奥さんを誤解してい
たのではなかろうかという気になりました。奥さんの私に対する矛盾した態度が、どっちも偽りではないのだろうと考え直して来たのです。その
上、それが互い違いに奥さんの心を支配するのでなくって、いつでも両方が同時に奥さんの胸に存在しているのだと思うようになったのです。つ
まり奥さんができるだけお嬢さんを私に接近させようとしていながら、同時に私に警戒を加えているのは矛盾のようだけれども、その警戒を加え
る時に、片方の態度を忘れるのでも翻すのでも何でもなく、やはり依然として二人を接近させたがっていたのだと観察したのです。ただ自分が正
当と認める程度以上に、二人が密着するのを忌むのだと解釈したのです。お嬢さんに対して、肉の方面から近づく念の萌さなかった私は、その時
入らぬ心配だと思いました。しかし奥さんを悪く思う気はそれからなくなりました。
「私は奥さんの態度を色々綜合して見て、私がここの家で充分信用されている事を確かめました。しかもその信用は初対面の時からあったのだと
いう証拠さえ発見しました。他を疑り始めた私の胸には、この発見が少し奇異なくらいに響いたのです。私は男に比べると女の方がそれだけ直覚
に富んでいるのだろうと思いました。同時に、女が男のために、欺されるのもここにあるのではなかろうかと思いました。奥さんをそう観察する
私が、お嬢さんに対して同じような直覚を強く働かせていたのだから、今考えるとおかしいのです。私は他を信じないと心に誓いながら、絶対に
お嬢さんを信じていたのですから。それでいて、私を信じている奥さんを奇異に思ったのですから。

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